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なぜ今ホスピタリティなのか ―― 宿泊・婚礼産業を通じたローカル経済圏へのコミットと、JPiXの挑戦
ホスピタリティ産業は、本当に「厳しい産業」なのだろうか。
老朽化や人手不足、事業承継の難しさといった課題が語られることは多い。現場で経営に携わる立場として、その深刻さは実感しているが、それらをもって産業そのものの将来性を語ることには慎重であるべきだと考えている。少なくとも私たちの経験から言えば、これは産業の問題というよりも、経営単位の問題である。
私たちが向き合っているホスピタリティとは、宿泊・婚礼を中心としたサービス産業であり、人が集い、滞在し、人生の節目を迎える場を提供することに本質がある。宿泊・婚礼は労働集約度が高く、売上に対する人件費比率が3〜4割に達するケースも少なくない。この特性ゆえに、人材への投資と生産性の設計が、経営成果を大きく左右する。
ホスピタリティ産業が抱える課題の正体
現在表面化している課題の多くは、個々の現場努力では解決しきれない構造的な問題である。資本構造、経営人材、意思決定プロセスが分断されたまま放置され、多くの施設では長期にわたり設備更新や経営体制の見直しが行われないまま環境変化にさらされてきた。
この構造問題は、後継者不足という形でも顕在化している。後継者が「いない」のではなく、次世代が引き継げる経営構造や時間軸が整っていないことが、本質的な要因である場合も少なくない。人材不足、設備老朽化、事業承継の難しさは、同じ構造の表裏として現れており、これこそ経営者が向き合うべき課題といえよう。
長期視点で経営に関与するJHGの役割
こうした構造的課題に向き合うため、JPiXホスピタリティグループ(JHG)は2025年10月1日に設立された。日本共創プラットフォーム(JPiX)の一員として、売却を前提としない長期的な株式保有のもとで、経営に継続的に関与する体制を構築している。現在は、浦島観光ホテル、クア・アンド・ホテル、クレ・ドゥ・レーブ、丸峰観光ホテル、みちのりホテルズの5社を中核としてグループ経営を開始しており、今後はこの枠組みのもとで投資先を段階的に拡大していく考えである。

JHGが重視しているのが、「分散ブランド×横串連携」という経営の考え方である。各社のブランドや地域性を尊重しつつ、DXや人材、調達など、連携する方が合理的な領域では横断的な取り組みを促進している。これにより付加価値労働生産性(付加価値≒粗利÷投入労働量)を高め、その成果を人材や設備への再投資につなげる好循環を目指している。
AIの進展がこの産業に与える影響も整理しておきたい。宿泊・婚礼が、人とのふれあいや場の空気といった、人間的な営みそのものに価値が宿る産業である以上、AIが体験の中核を直接代替する領域は今後も限定的である。一方で、AIによって人が担わなくてよい業務を減らし、現場の時間と集中を人が本来向き合うべき接点に再配分できれば、体験価値はむしろ高まり得ると考えている。
ホスピタリティは、宿泊・婚礼という極めて人間的な営みを支える産業である。JHGは、長期の視点で経営に関与し、実装を積み重ねることで、この産業の可能性を次の世代につないでいきたいと考えている。